インサイドセールスでは、営業プロセスごとに役割分担をすることで、より効率的・効果的な営業活動を行うことができます。営業の最終的な目標になる指標は売上であることが多いですが、受注よりも前のプロセスでは売上で成果を測ることが難しいため、プロセスごとに適切な指標を持つ必要があります。このようにプロセスごとの達成状況を確認するための中間指標をKPIといいます。この記事では、インサイドセールスにおけるKPIの設定について解説します。
※インサイドセールスの役割は前回記事『【インサイドセールス#2】インサイドセールスの役割を深掘り! SDR、BDR、Online Sales とは?』を参考にしましょう。
そもそも、KPIとは?
KPIとは Key Performance Indicator の頭文字をとったもので、一般的に「重要業績評価指標」と訳されます。小難しい表現ですが、「最終ゴールを達成するために重要な中間指標」といったイメージです。
営業の最終ゴールは何でしょうか? 一般的には「売上」であることが多いですよね。このような最終ゴールのことを KGI(Key Goal Indicator)といいます。KGIとKPI、どちらも指標(Indicator)ですが、KGIが最終ゴールの指標であるのに対し、KPIはゴール達成に重要な中間指標です。下記の図で説明しましょう。
まずは見込み顧客(リード)の情報獲得を最初のステップだとすると、「リード獲得数」は売上達成に重要な指標ですね。獲得したリードはすべてが商談につながるわけではないので、「商談化数」も重要だと言えそうです。最終的には、商談は受注につなげなければなりませんので、「受注数」も確認したいところです。このように売上につながる重要な要素を分解し、指標としたものがKPIです。
KPIのメリット、デメリット
KPIを設定するとどのようなメリットがあるでしょうか? 例えば、売上目標が未達だった場合、その原因を探る必要があります。KPIを設定して計測していれば、リード獲得数が少なかったからなのか、商談化がうまくいかなかったのか、商談の受注に課題があったのか等、どこに原因があったのかを特定し、対策を立てやすくなります。つまり、PDCAを回して成果を向上していくための鍵になります。
また、担当者にとってはKPIが何を重視して仕事をするべきなのか明確になるメリットがあります。KPIを設定してないければ、担当者によっては、ウェビナーの開催数が重要だと考えるかもしれませんし、メール開封率の向上を重視するかもしれません。仮に「商談化数」がKPIであるとすれば、ウェビナーの開催数を増やしたり、メールの開封率が上がっても、商談化につながらなければ意味がないということになります。KPIを設定しておくことで、何のためにウェビナーやメールをするのか明確になります。
デメリットとしては、KPIを追うことが至上命題になってしまい、顧客や会社全体の視点が欠けてしまうことがあります。例えば、商談化を重視するあまり、強引なアプローチをしてしまい、顧客満足度を下げるといった状況です。また、KPIを多く設定しすぎて、どれが重要なのかわからなくなってしまうことも発生しがちです。事業や役割によりますが、一般的には2~5程度の覚えていられる程度のKPIの数が望ましいでしょう。
どのようなKPIが望ましいのか
それでは、どのようなKPIを設定することが望ましいのでしょうか。様々な考え方がありますが、まずは「KGIにとって”本質的”かつ”十分”なKPI」という観点で考えてみましょう。
「本質的」とは、KPIの達成状況がKGIに明確につながっていることです。例えば、KGIを売上、KPIを「リード獲得数」としましょう。「リード獲得数」は売上に直結しうる数値ですので、本質的であると言えます。一方で、「広告出稿数」がKPIだといかがでしょうか? 広告出稿した数が売上に直結するとは限らないので、KPIとして適切ではないでしょう。
「十分」とは、KPIが業績の評価に十分なものであるかということです。例えば、「商談化数」だけをKPIにした場合、商談化数を増やすために受注の可能性がほとんどないようなリードに対しても商談化しするような行動が発生するかもしれません。つまり、商談化数だけではKPIとして十分ではありません。このようなケースを防ぐためには、「有効商談率」(受注につながった商談の率)等の指標を組み合わせる必要があります。
インサイドセールスにおけるKPIは?
インサイドセールスはリードの商談化を担当するケースから、リード獲得から受注までを担当するケースもあります。ここでは、リード獲得、リードへのアプローチ、商談(受注)の3つのプロセスで望ましいKPIを考えてみましょう。適切なKPIは事業内容やインサイドセールスが担っている役割に応じてケース・バイ・ケースなので、あくまで一例として参考にしてください。
・リード獲得のプロセス
「リード獲得数」は定番のKPIです。また、無限にコストをかけてよいわけではないので、「リード獲得費用(平均費用)」も見た方がよいかもしれませんね。場合によっては、リードの質が重視されることもあるでしょう。その場合は、質の高いリードを定義し、それにあてはまるリードの割合を「優良リード比率」としてKPIにすることも考えられます。
・リードへのアプローチのプロセス
商談が発生するBtoBの事業であれば「商談化数」は必須のKPIです。また、安易に数だけを追わないようにするために、前述した「有効商談率」等も合わせて設定しておくことが望ましいでしょう。
BtoCの事業では商談がない場合も多いので、リードからの反応をKPIとするのが一般的です。メール開封率、ウェビナー参加数、イベント参加数等のKPIが考えられます。また、リードからの反応をいくつかのステージにわけて、より受注に近い反応(ステージ)に近づけていくことを「リードナーチャリング」(ナーチャリングは育成するという意味です)と言います。
・商談(受注)のプロセス
まず「受注数」はKPIとして設定したいところです。受注数だけをKPIとすると、受注金額が低い案件ばかりを追いかねないので、「平均受注金額」等も合わせてKPIとしておくとよいでしょう。営業効率を重視するなら、リードのうちどの程度を受注に結びつけられたのかを「受注率」としてKPIにしておいてもよいでしょう。eコマースやSaaS(Software as a Service)等のデジタル領域の事業では、「平均受注金額」は「CPA(Cost Per Aquisition)」、受注率は「CVR(Conversion Rate)」とも呼ばれ、定番のKPIになっています。
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