マーケティングに活用できる分析手法のひとつ、回帰分析についてご紹介します。
こちらの記事は後編です。
*前編はこちら↓
回帰分析の手順
STEP1. 課題の整理
目的変数(明らかにしたいもの)は何か?例えば広告の出稿を行う場合、
売上、ブランド認知度、店舗・サイト訪問者数、顧客単価、リピーター獲得…
など、様々な効果を期待して出稿しますが、分析の際はその目的が何かを明確に定義します。
今回は「何がブランド認知度を上げ、ブランド指名で検索してもらうために有効なのか」を分析するため、目的変数に「ブランド指名検索数」を置いてみます。
STEP2. 目的変数に関係すると考えられる説明変数(変動要因となり得るもの)を決定する
ブランド認知度の向上に影響を及ぼすと考えられる変数を洗い出し、最終的に下記注意点に留意して決定します。
※変数を洗い出す際の注意点
①説明変数は3~7個に絞る。多すぎても少なすぎても精度の高い予測ができません。
②相関関係が高すぎる変数はどちらか一方に絞る。
例:メルマガ配信数と会員数など
③階層が異なる説明変数は、より影響が強いと思われる変数を選ぶ。
例:一覧ページPV、詳細ページPVなど
④数値データに変換する。天気や気温などのデータも、定義を決めて数値へ変換します。
例:晴れ=0、雨=1など
今回は下記指標を説明変数として設定します。
①TV CMのGRP(延べ視聴率)
②動画広告のView数
③リスティング広告の通常キーワードのimp数(表示回数)
④メルマガ配信数
⑤LINE Ads Platform広告クリック数
STEP3. データの準備
目的変数・説明変数それぞれのデータを期間などの同条件で収集・集計します。
回帰分析で利用できるデータは全て数値データなため、定性的な変数(天気や曜日など)も数値に変換(晴れ:0、雨:1など)しておく必要があります。
PDCAを円滑に回すためにも、事前に効果測定の方法を決めておくことが大切です。
以上の準備が整うことで、回帰分析を開始できます。
STEP4. Excelの回帰分析機能を利用してデータを分析する
Excelで目的変数、説明変数のデータを作成します。
列に目的変数と説明変数の項目を、行に日付など集計単位を置くと分析がスムーズです。
STEP5. 回帰分析のデータを選択
Excelのオプションから「分析ツール」のアドインを有効にすることで回帰分析機能を利用できます。
回帰分析の指標
結果を分析
回帰分析結果の概要には多くの指標と数字が並びますが、その中から重要な下記指標をチェックしていきます。
①補正R2(アールスクエア)※自由度調整済み決定係数
説明変数の確からしさを表します。1に近づくほど信頼性が高いと言えます。
一般的にはこの値が0.7以下の場合は説明変数を見直した方が良いですが、広告効果においては0.6以上でも高いと言われています。
また、サンプル数が少ないと低くなる傾向があります。
今回のデータは0.9なので信用できるデータと言えます。
②有意F
回帰式の再現性が0になる確率を表します→0に近いほど信頼性が高いと言えます(再現性が0になる確率が低い=再現性が高い)。
一般的には0.05より小さければこの回帰式は受け入れられると考えられます。
今回のデータは0.02なので再現性が高いと言えます。
③係数
切片(説明変数に影響を受けない値)と説明変数(ここではTV CM~LINEの各実績)が目的変数に影響を与える値です。
各変数が1増えると目的変数の成果が係数分増加(減少)することを示します。
今回のデータでは下記のような意味になります。
・TVCMが1増加すると、成果が0.6減少する
・動画広告が1増加すると、成果が0.0004増加する
・リスティング通常キーワードimp数が1増加すると、成果が0.001減少する
・メルマガ配信数が1増加すると、成果が0.01減少する
・LINE広告クリック数が増加すると、成果が0.0009増加する
④P-値
各変数が成果とどの程度「連動(相関)していないか」ということを表す指標です。
マーケティングデータの分析では一般的に有意水準は0.05に設定され、P値が0.05未満であれば「その説明変数が目的変数の予測に有効」といえます。
回帰分析では
「補正R2」でデータの信頼性(説明⼒)を確認する ※0.6以上
「有意F」で回帰式の再現性を確認する ※0.05以下
「P-値」で成果との相関性(連動している)を確認する ※0.05以下
上記に当てはまる要素の「係数」が整数(プラス)のものが効果があると言えます。
POINT
回帰分析で利用できるデータはすべて数値データです。
分析をしやすいようにデータの取得・管理方法を決めておくことが大切です。
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